女性が来てくれない広島県―広島がざわつく「3年連続転出超過No.1」を深ぼるシリーズ

2024.05.27
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広島県の人口が不穏な様相を呈しているようです。先ごろ「3年連続で転出超過ワースト1位」という報道があり、広島界隈をざわつかせていました。

広島県は若者に逃げられている? 転出超過“3年連続ワースト1位” 専門家「完全に時代遅れ、県は反省して」(FNN プライムオンライン)

総務省の「人口移動報告 2023」

この報道は総務省が毎年発表している住民基本台帳からの報告に基づいているもの。転入者と転出者の差し引きで、広島県は3年連続転出超過数全国トップ、しかも今回は1 万人の大台をさらっと飛び越え、超過数1 万1,409人という結果だったらしい。

広島県の湯崎知事は即座に「国外の転出入を含んでおらず、ゆがんだ統計」と反応していたよう(「おっ、伏線はりますね...」とちょっと思ったりもしたが...)

広島県知事が批判、総務省の人口移動報告は「ゆがんだ統計」 転出超過の「3 年連続全国最多」に県の統計データで反論

ちなみにその後、知事からは「女性デジタル人材を育成する」とか「若者流出対策で調査チーム」立ち上げとかが発表されており、今後具体的にどのような策が打ち出されていくのか、関心が高まるところです。

広島県が若者流出対策で調査チーム 転出超過全国最多で(日本経済新聞)
湯崎知事“「転出超過」対策へ女性デジタル人材育成”

ちなみに総務省が発表している元ネタはこちらです。

住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果(総務省)

この総務省のページにもリンクがある統計表で、「第1表 男女別都道府県内移動者数...」の表が非常に面白い。

女性より転出している

まず広島県だけ数字抜き出してみると、転入が44,660、転出が56,069で、たしかに-11,409人の転出超過ですね。男女比において、差し引きだけみると男が-5,745で女-5,664で半々ぐらいに思えるのですが内訳をよくよくみると、女性よりも、男性の方が圧倒的に転出している。女性の1.33倍、転出している。ちなみに転入者も女性より男性の方が多くてこちらは男女比1.43倍。

■広島県

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先にも上げたNHK の記事で「この中で湯崎知事は特に若い女性が男性に比べて就職を理由に県外に転出している傾向があるとして...」とあるけど、ん、なんか違う...といきなり不安になる。(いや、もちろん男性の転出は「おじさんばっかり」なのかもしれないし、理由が「就職ではなく、旅に出た」なのかもしれない。あと「昔に比べて」特に若い女性が、という可能性はあるかもしれない)。

とにかく20代が移動する

女性についてなにか言うなら、転入してくる女性が広島はいよいよ少ない、という見方はできますね。だったら転入対策をがんばったほうがいい。大空に羽ばたいてゆかんとする若い女性を足止めしようとするよりも、大空から舞いおりてくる女性に着陸しやすい場所をつくることを考えたほうがなんか健全。だって男性はいっぱい来てんだし。つまり男性が食指を伸ばしやすい仕事はあっても、女性が食指を伸ばしやすい仕事が広島にはないってことですね。産業構造が目に浮かぶ気がします...。

ちなみに、総務省の元ネタで目を瞠るのがこれ。全国的に、県をまたぐ移住をするのはとにかく20代。15~19歳で動いているのは、ほぼ18~19歳と察しますが、つまりこれって大学に入るタイミングよりも圧倒的に「就職するタイミング」が動くタイミングなのでしょう。親の仕送りも難しいし地元の大学に行ったけど、就職するときはさすがに出ちゃお、ということでしょうか。そして20代後半でもかなりアクティブに動きがあるのも面白い。

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これ、青田刈りねらいで、大学生の転入獲得に予算投下全振りでどうでしょうね。「県が奨学金出します」というのはよくある気がするが、もっと露骨に家賃おしだしで「親御さんご心配なく、お子さんのお家賃は県が出します!」というキャンペーン。学費は県内だろうが県外だろうがどうせかかる。親と親の財布を気遣う子どもにとってボトルネックになっているのは一人暮らしの家賃と生活費だろう。

ここで、では広島県内の「年代別」の転出入状況どうなのだろう、と思い検索したら広島県庁のホームページ掲載の統計がでてきました。
参考>年齢階級別転出入状況の推移

これによるとやはり、広島県の転出超過は半数以上が20~24歳に集中していた!35歳以降の世代では、逆に転入超過だったり、トントンだったりとまちまちなのだが、若年層は20代の転出超過がなにやら物々しい勢い...。いったん見なかったことにしたい。

広島よりもヤバい県があった

話戻すと、具体的に転出と転入のそれぞれの数字をちゃんとみると面白いですね。というか+-結果後の純増・純減だけみていても本質は全くわからない、ということがわかりました。男女の違いがまたいろいろと想像力をかき立ててくれます。広島だけでなく47 都道府県でも「男女比率」をとってみましたのがこちら。
とりあえず「超過数」でソートしてみますとこのとおりです。(クリックすると拡大できます)

総務省_住民基本台帳

広島、愛知、兵庫、福島...と続いておりますね。

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広島のダントツぶりはなかなかのものですが、愛知、兵庫、が続くということは、ははーん、もともと人口の多い県は数字も大きく出ちゃうのだなと察せられます。だったら各県それぞれの人口比で考えないとフェアでないですね。早速人口比を取ってみると...

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おっと、広島よりも成績の悪い県がある!長崎、青森、福井。これらは人口がそれほど大きくないにも関わらず、広島以上に勢いよく減少中ということか。特に不穏な気配のするのは長崎。男女差が激しい。どうした長崎。

女性が沢山出てゆき、そして入って来ない長崎...

具体的に長崎の、転入、転出の数字をみてみましょう。

 

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うわなんかえげつない。

まず転出。男女比が1.17と低めというのは裏を返せば女性もどんどん出ていっているという意味ですね。さきに、広島でも「女性ではなく男性のほうが多く転出している」という話をしましたが、実際は日本全国1つの例外もなく、女性より男性のほうが転出しています。だから長崎でも男性が多く転出しているには違いないんだけど、世の中平均的にあまり出ていかないはずの女性も長崎ではどんどん転出してしまっている、ということになります。

次に転入。転入してくる女性も少ないですね長崎。男女比が1.43ですがこちらは逆に比率が大きいほど女性が来ない、という意味になる。つまり長崎は、女性がたくさん出ていき、そして女性があまり来てくれないっていうコンボ状態なんですね(泣)ついには対人口比の転出超過ランキングで、広島をおしのけワースト1位になってしまったと、そういう解釈ができます。ちなみに2位の青森もほぼ同様のコンボ技が効いているようですが、青森のほうが若干、女性地元残留度が高い、しかし来てくれる女性は長崎以上に少ない、みたいなことのようです。広島は、女性の転出は長崎ほどではない。

滋賀勝ち組キープの理由は「学生」か?

「転入」が超過の勝ち組都道府県も見ておきましょう。絶対数でなく、人口比でのランキングです。

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東京、埼玉、神奈川、がTOP3。東京や大阪は「転入」数の男女比も小さく大都会が女性を吸い寄せている様が浮かびます。長崎から出て行っちゃったあのコは東京に行っちゃたのかな...。

福岡5位にも注目ですね。上記10以内に愛知がないのに福岡が入っているというのが福岡の勢いのすさまじさを感じさせます。

ところで7位の滋賀はなんなんですかね?滋賀絶好調なの?

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ここで上表、転出数と転入数も人口比で出し直して上位をじまじまと眺めていると、ランキング上位の都道府県というのはおしなべて「転入」もおおければ「転出」も多い、非常に出入りの激しい都道府県であることがわかります。つまり転入超過は、「転出の抑制」よりも「転入の多さ」で生じさせるのが勝ちパターンなのでしょう。滋賀も、転出はけして少なくない。ただ、なんとかトントンで転入者を獲得できている。

ひょっとすると滋賀は、京都(人口あたり学生数全国1位)のあおりで学生の転入が多いのではないか?と思いついて調べてみると、人口あたり学生数で滋賀は全国7位でした。これはなかなかのポテンシャルを秘めているのでは!

都道府県データランキング > 大学

やはり学生の青田刈りを考えるのが正しい気がしてきます。

流出しているのではなく、流入していないのである

もう1度広島の数字を引っ張り出して滋賀の下に並べてみるとよくわかりますが、やはり広島は「転入」が少ないんですよ。人口規模に対して。

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「転出超過」という言葉が先行するとどうしても「流出が多い」というイメージが先に想起されてしまいますが、流出だったら広島より東京のほうが断然多い。滋賀だって多い。流出が多いんじゃない、流入が少ないんだっていうのが広島の問題の本質なのですね。

ここで前の方で、一旦見なかったことにした(笑)広島県庁ホームページ掲載の、年代別の転出入データ(令和5年)を見てみましょう。これは日本人だけをカウントしているようで、若干総務省の数字とは違いますが、傾向は大きくは変わらないと思われます。

スクリーンショット 2024-04-10 14144030 代後半以降、転出入トントンな様子ですが、20~24歳の転出超過ぶりが強烈ですね。さらに性別にした統計は見つけられなかったのですが、女性の転入が男性より少ないのはこれまでの考察から想像がつきます。やはりこの世代の「転出」をどうにか抑えようとするのでなく、「転入」をどう増やすか、そしてとくに女性にどれだけ来てもらえるか、そこが鍵になるでしょう。

最後に、重要なので繰り返しますが、「転出超過」という言葉は、直感的な響きとして「転出がすごい多い」みたいに捉えられがちですが違います。転入の少なさでも起こる現象です。プラス(転入)とマイナス(転出)の内訳がどうかなのをしっかり見定めて両方の推移をウォッチしていないと本質はなにも見えてきません。

今回はここまで!

(担当:阿部倫子)

 

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