広島県の人口統計において、3年連続で転出超過が全国No.1、という話題がありまして、それに寄せたレポートシリーズをお届けしております。こちらの記事もぜひご一読ください。
さて「3年連続で転出超過が全国No.1」というのは総務省が毎年発表している住民基本台帳ベースの報告から来ています。この総務省発表を読み込むと、とにかく「学生が就職するタイミングをおさえることが肝要」ということが見えてきます。
そこでクラシノではネットリサーチ会社を使って、20 代の広島在住の学生にアンケート調査をするという自主企画を実施。回答者数(n)がだいぶ小さくなってしまったのでご参考までなのですが、面白い部分をご紹介したいと思います。
本題に入る前にネットリサーチの実務話をちょっとします。興味のない人はこの章読み飛ばしていただいてOK です。
今回はサーベロイドというリサーチサービスを使用しました。しかし他の案件でもそうなのですが若い世代の回答を集めるのは苦労することがありますね。エリア限定にするといよいよ十分なサンプルサイズを確保するのが難しくなる。今回[20 代][広島県在住][学生]で絞り込みをかけて調査を開始したのですが、ようやく139人の回答を得ました。サーベロイドのリサーチモニターの規模は400 万人ということですが、類似の狭い範囲の調査をお考えの場合はもっと大規模なモニターを抱える調査会社でなければ役にたたないでしょう。
ただ、どこもサーベロイドよりはお高いのですよね(今回も弊社自主調査なので予算に限りがございましてですね)。マーケティング・リサーチは弊社でもよくやるのですが、だいたいサーベロイドでやります。業界最安に近いと思いますがそのかわり設計とか設定とか集計とか、全部自分でやってね、というスタンス。でも対象者の設計も細かくできますし、提供されている集計ツールにしても十分に高機能なので、調査に慣れている人にとってはムダのない素晴らしいサービスといえると思います。別にサーベロイドの回し者というわけではないですが、ちゃんと設計と集計ができるマーケターにはおすすめしたい。
しかし今回みたいに対象が絞り込まれている調査だとサーベロイドはnが足りない、そこだけ要注意です。あと、あまり高機能な集計を求められていない単純な調査であればサーベロイドよりもさらに安いところがあります「freeasy」とか。提案資料の説得力増強に「サクッとエビデンスとりたい」みたいなとき便利です。
逆に、調査にあまり慣れてないから営業マンや専門のしっかりした担当者のサポートが欲しい、という場合は「マクロミル」が老舗で、営業マンのフットワークもメチャ軽い印象があります。モニター数も3600万人ですって。いずれにしても調査のクオリティは、調査会社やモニターのクオリティより「設計者」のクオリティにより大きく依存するというのが私の持論です。
いきなり盛大に話がそれてすみません。
さて今回の調査は前述の通り、
を対象にしています。調査期間は2024 年の2 月末に行いました。集まった回答139 人のうち、男性は37 人、女性は102 人(けして広島の学生の男女比を表しているのではなくて、サーベロイドで回答してくれるモニターのマックスがこうなった、というだけです)。なのでそもそも「女子に偏った調査」という目で眺めてください。
まず、広島の地元出身者なのか、県外出身者なのかを見てみましたら、37%が県外出身者でした。少し前に弊社で担当したことのある広島県内の調査で15~69 歳の人を対象としたものでは、県外出身者は3 割弱と出ていたことがあり、それと比較すると県外出身者が多い印象です。大学生というのは他県から来ていることが多いということかもしれません。
それとnが小さいので注意は必要ですが、やはり男性のほうが女性より他県出身者が多いのかもしれません。これは住民基本台帳の実数でわかっていることですが、おしなべて女性よりも男性のほうが都道府県をまたぐ移動をするのが日本全国例外なく言えることです。
広島が好きかどうか、というストレートな質問もしてみました。
さて今回139人のうち、この春(2024年3月)卒業し、かつ就職をする人に対してさらに詳しく聞いてみました。ただしこれはたったの21人しか抽出できなかったので本当に参考までです。21人の男女内訳は、男性2人、女性19人でした。この春からの[実際の就職先]が県内なのか、県外なのかを聞いてみましたところ、県内就職が14人、県外就職は7人でした。他に、
も聞いてみました。時間の流れに即すと、[出身地]→[卒業後の居住希望地]→[就職活動の対象]→[実際の就職]という流れになりますが、それらの回答の組み合わせをまとめたのがこちらの表です。
こうやってみると、なかなかに面白いことが透けて見えてくるようで、nが小さいのが本当に悔やまれます。大規模にやってみたかったですね。この表から統計的になにか言うのは難しいですが「想像を膨らます」ことはできそうなので、まじまじと見ていきたいと思います。
広島一人称目線でいうと、地元出身の学生さんにはぜひ地元にそのまま残ってほしいし、県外出身の学生さんには、県外に帰らず末永く広島に居着いてほしい、ということになります。そんな気持ちで見てください。
県内出身者11人のうち、実際は県外就職となった人が1人います(A)が、そこは阻止したかったところ。でもその人は希望としても県外に出かったようで、引き止めるのはムリだったかもしれません。ただ、県内での就職活動もやっていたようなので、広島県としてチャンスはあったのかもしれません。
また県外出身者9人のうち、3人(B)はそもそも県内残留を希望してくれていたというのはよい話です!ただその3人全員、就職活動を県外対象にも行っており、しかも1人は県外に逃してしまった(C)!むむむ。
県外出身者で、卒業後は県外へまた出ていくことを希望していた6人のうち、5人は県外企業のみを就職活動の対象にして、5人ともそのまま県外での就職が決まってしまっております(D)。ただ1人だけ、県内も対象にして就職活動を行った1人(E)はなんと結果的に県内残留での就職に転じてくれているよう(F)。
こうして眺めてみますと、外側からなにかアプローチして、意思決定に影響を与える可能性があるとしたら「就職活動」という状況がチャンスなのかも、と思えてきます。上記表で「元の希望に反した結果」に至っている人はどちらも就職活動を、県内、県外両方で展開していて、結果、転じています。
また県外から来てくれた9人が、合計すると3人も県内就職で残ってくれるというのも希望が持てますね。学生の青田刈りはやはり「アリ」な気がします。この点についてはもう1つのレポートもぜひご一読ください。こちら。
前章のとおり、実際の就職先は、県内が14人、県外が7人でした。それぞれに、いつか県外に出たいか?と、いつか広島に戻ってきたいか?も聞いてみました。すると...。
Q.広島県内にて仕事に就く予定の方にお聞きします。今後、広島県外に引っ越し・移住して、暮らしてみたいと思いますか?
県内残留者14人のうち「いつか出たい」人は6人いました。一方県外流出者のうち「戻ってきたい」人は0人でした...。しかも「広島でまた住みたいとは思わない」とはっきりした人が3人...。広島一人称目線でいうとガーン、ですね。いや今まさに卒業し、よし引っ越しだ、県外で就職だってタイミングで、そりゃあまた戻ってくるかどうかなんて聞かれたって、知らん、という話かもですがせめて!「いつになるかわからないが、戻ってきてまた...」に1票を!清き1票を...(泣)
ムダなこととはわかっていながら、おそるおそるこの3人の、その他プロフィール属性を確認しましたところ、3人とも女性。広島県内出身者が1人。県外出身者が2人。広島が好きかどうかは1人が「かなり好き」、1人が「まあまあ好き」、1人が「かなり嫌い」でございました。
最後に、広島はどうしたらええんじゃ!というのを若者に丸投げすべく聞いてみました。たいがいこの手のアンケートで、自由回答形式でなにか書いてくれと頼んでも「とくになし」とか「あ」とかだけ書いて去っていく人が多いものですが、どうですかこれ!21人か取り出せなかった卒業生回答であるにもかかわらず、こんなにしっかりと書かれたご意見が集まりました。広島の学生さんまじめ!勤勉!ありがとうございます。
Q.今後、より多くの若い人に広島に住んでもらえるようにするために、行政や政治家、広島の企業経営者などのリーダーたちは、何をすべきだと思いますか?あなたの希望や要望、アイデアも教えてください。
ごもっともなご意見多数。「給与の男女差を是正する」は本丸感ありますね。この方は「子育て支援以外の女性支援をする」とも書かれており、そして県外ご出身で広島は「かなり嫌い」だそう。広島一人称では耳をふさぎたくなるかもしれませんが、こういうご意見こそ聞いていかねばならないものだとは思います。「他の県より広島のお給料を上げる」ここも大事ですね。若い人材にしっかり投資してこその輝く未来、これ必定。
今回はここまで!
(担当:阿部倫子)